SAEKO : 第1話 きっかけは出版社のスカウト

 雨になりそうな渋谷にて。  高校時代のBF、その影響が無ければ。
「あ~、もう無理っ!」 

引越しの段ボールの山の前でつい声をあげた。
...上京して早三日。
その日は少し曇っていた。入学式までまだ数日あるけれど、それまでにどこか、東京の街も出かけておきたい。段ボールを片付けては寝る......そんな毎日にもいい加減ウンザリしていた。

「さて、と...天気予報も晴れだったし、渋谷にでも行ってみるかな。たまには外の空気も吸わないと...」

そうと決め、故郷で合格の知らせが舞い込んで以降ずっと眺めていた"東京マップ"をバッグに詰め、JRに飛び乗った。
(「じつは、欲しかったものもあったりするんだよね」) 雨になりそうなスペイン坂を急いでかけ上がり、見覚えのあるPARCOが目の前に立ちはだかった時、 肩を後ろからたたかれた。

「!?・・・」

「ごめんなさい、私、○○出版社の者です。学生さん... かな?」

「・・あっ、はい・・・・・・」

「突然ですけど、雑誌の読者モデルにやってみませんか? 今、ヘアモデル探してるんです」

「えっ?・・・」


それが女性だったこともあり、次に名刺を出されて、ようやく少しほっとした。そこには、日本海を臨む自分の地元にも売っていた、とある女性誌の名前があったからだ。
それでもまだ、そのときはこの後自分に訪れる展開を、全く想像していなかった。
 雨になりそうな渋谷にて。  高校時代のBF、その影響が無ければ。