SAEKO
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第1話 きっかけは出版社のスカウト

その後、ふたりの間に今まであった柔らかい空気はなくなり、ひたすら図書館にのみ通う日が続いた。
「あれ?、今寝てませんでした?ちゃんと、付いてこいよ~。」
「恵太ほどじゃないけど、私もそこそこ出来るから、絶対受かりますから!」
受からないと離れ離れになってしまう。必死だったし、どこか悲壮感もあった。
しかしこれが愛の力か、結果彼は東大に、私も第一志望の女子大に合格。晴れて「二人そろって上京」の切符を手にいれた。
「ちょっと!信じられなくない!?恵太やったね!」
「そうだな。『東京の中心で愛を叫ぶ』になったな!」
上京が決まって以降、ふたりして手をとりあって喜んだ。親の手前、一緒に住むわけにはいかなかったけど、近くに住んで、何度も行き来して、夢のような学生生活が待っているはずだった。
でも、結果は東京での生活が始まって半年も経たないで別れる事になった。
「ねぇ、聞いていい?私たち、どうして一緒に東京出てきて、つきあい続けてるんだっけ・・・」
「そりゃいつか、結婚するんだろ。うちで頑張ってくれよ!」

それを突き詰めたところにはそれなりの理由もあった。
恵太の実家は地元で、とても有名な老舗旅館だった。彼との結婚イコール、自分はいつか、女将になるということだった。
ある時、母ともこんな会話になった。
「 あのね、、恵太は優秀だし付き合うのに悪い子じゃない。でもね、うちみたいな家で育ってきたあなたに、頭を下げるお客さん相手の商売できるの? 母さん、全然想像できないけど...。」
「.........」
父も母も彼を取り巻く環境に抵抗があった。そして自分も母の言葉に言い返す事ができなかった。抵抗は彼の環境のそれではなく、自分の環境との"ギャップ"に抵抗があるといった方が正しいかもしれない。
自分の家族はとても仲が良く、お互い大事にしていた。自分自身「親に祝福されない結婚は出来ない」という気持ちもあり、それがある以上、いくら若くても、結婚を反対されている彼と付き合い続ける事に昔のようなモチベーションが保てなくなっていった。